【この記事についてのご注意】
本記事は、筆者(もこあい先生)の学習・指導経験にもとづいて、高校数学「多項式の展開」をわかりやすくまとめたものです。
内容には細心の注意を払っていますが、誤りやより良い表現の余地が残っている可能性があります。
「ここが違うかも?」「この説明をこう言い換えると分かりやすい」などお気づきの点がありましたら、
お手数ですがコメント欄やお問い合わせフォームから教えていただけると嬉しいです。
いただいたご意見は、今後の訂正・追記に必ず反映していきます。

【高校数学①】多項式の展開をゼロから理解する|中学→高校へのつまずきが消える入門ガイド

こんにちは、もこあい先生です。
このページは、わたしのブログで始まる「高校数学シリーズ」の1本目として書いています。

「(a+b)²=a²+2ab+b²」
高校の授業で黒板にこの式が出てきた瞬間、
「あ、これもう無理かも…」と感じた人もいるかもしれません。
でも、心配しなくて大丈夫。
“わからない側の気持ち”に立って、ゼロから一緒にやり直すための記事にしてあります。

もしあなたが、先にこちらの中学生記事

【中学生向け】文字式の世界へようこそ|小学校→中学校のつまずきをゼロにする入門ガイド

を読んでくれていたら、ここはその「続きの授業」にあたります。
もちろん、まだ読んでいなくても大丈夫。この記事だけで分かるように作ってあるので、あとからゆっくり戻ってもらえればOKです。

この高校数学シリーズでは、もこあい先生として次のことを約束します。

  • 中学→高校でどこでつまずきやすいかを、ちゃんと言葉にすること
  • 公式を丸暗記させるだけの授業にはしないこと
  • 図・たとえ話・キャラクターを使って、「できる」まで伴走すること

そのうえで、この記事では次の流れで進みます。

  • ① 中学の文字式・算数の「ほんの少しのモヤモヤ」を言語化する
  • ② (a+b)²・(a−b)²・(a+b)(a−b) を図形(面積)から理解する
  • ③ 数字の例題や小テストで、「わかる」から「できる」に変える

「高校数学、今からでも間に合う?」
——はい、大丈夫です。
ここでは、途中で数学が苦手になった人も、これから学び直したい大人も、
みんながもう一度スタートラインに立てるように、ゆっくり・ていねいに進めていきます。

黒板の前でチョークを持ち、展開公式を指し示すもこあい先生が中学から高校数学への橋渡しをやさしく説明するシーン。主要公式(a+b)²と(a−b)²を理解しやすく示している。
中学→高校の数学をつなぐ最初の一歩を、もこあい先生がやさしく案内する。

1.高校数学でいきなりつまずく理由は「構造のジャンプ」

ここからは、教室でもこあい先生が黒板の前に立って話しているイメージで読んでみてください。

中学までの数学(算数を含めて)は、こんな感覚でも何とかなった人が多いと思います。

  • とりあえず計算のやり方を覚える
  • パターンに当てはめて、形をマネする
  • 答えが合えばOK

一方、高校数学からは「なぜその式になるのか」「この式は何を表しているのか」といった
構造そのものを理解していないと、すぐに行き詰まります。

多項式の展開は、その最初の「ジャンプするポイント」です。ここで

  • 公式を暗記して乗り切る → 後で苦しくなりがち
  • 意味から理解する → その後の数学が一気にやさしくなる

という分かれ道が生まれます。


2.高校数学の前に:算数の「4つの基礎」をそっと思い出す

高校数学の前に“算数の4つの基礎”をそっとおさらい。

◆ 健太コラム:「じつは算数からちょっと自信がなくて…」

健太: 高校になってから数学が面白くなってきたんだけどさ……
小学生のころの掛け算とか、割り算とか、ところどころ曖昧なんだよね。
恵子: あ〜、分かるかも。
私も「分配法則」って名前は覚えてるけど、ちゃんと意味を説明しろって言われると不安かも。
悪もこあい先生: ふふん。いいじゃないの、その正直さ。
「曖昧なまま進む」のが一番つらいのよ。
今日はその穴を、ひとつずつ埋めていきましょうか。

高校数学の「展開公式」につまずいている人の多くは、
実はその手前、算数〜中学数学の次の4つがモヤっとしていることが多いです。

  1. ① 分配法則:a(b+c)=ab+ac
  2. ② かっこの意味:「ひと固まり」として扱う感覚
  3. ③ 割り算の意味:等分・逆数としてのイメージ
  4. ④ 面積で考える力:縦×横=四角形の面積

この記事では、これらを「できるだけ自然に」思い出しながら進みます。
完璧じゃなくて大丈夫。
読んでいるうちに「あ、そうだった」とつながればそれでOKです。


3.そもそも「多項式」って何?中学の文字式とのつながり

まずは言葉の整理からいきましょう。
中学で扱っていたものは、だいたいこんな感じでした。

  • x+3
  • 2x−5
  • 3x+4y

これらは、中学では「文字式」と呼ばれていました。
高校になると、これらは「多項式」というグループの中に入ります。

ざっくり言えば、

  • 項が1つ:単項式(例:2x、−5a²)
  • 項が2つ以上:多項式(例:x+3、2x−5、3x+4y)

というイメージで大丈夫です。
「多項式の展開」というのは、
かけ算の形になっている多項式を、足し算・引き算の形に広げていくことだと思ってください。

例:
(x+2)(x+3) を展開すると、x²+5x+6 になる。
かけ算の「かたまり」を、足し算・引き算の形に書き換えた、というイメージです。


4.展開って具体的に何をしているの?

次の式を見てみましょう。

(x+2)(x+3)

これは、

  • 「x+2」という箱
  • 「x+3」という箱

をかけ算しているイメージです。
このとき、中身同士を全部かけ合わせると、

(x+2)(x+3)
= x(x+3) + 2(x+3)     ← 分配法則
= x²+3x + 2x+6
= x²+5x+6

ここで使っているのが、さっき出てきた
「分配法則 a(b+c)=ab+ac」です。

展開とは、分配法則を徹底的に使って、かけ算の形を「広げる」操作
これを図形で見ると、もっとスッキリ分かるようになります。


5.図形で理解する (a+b)²:面積から生まれる展開公式

まずは、有名な

(a+b)² = a² + 2ab + b²

を、図(面積)から理解してみましょう。

(a+b)² を正方形の4つの領域に分け、a²・ab・ab・b² の面積として視覚化した図。多項式の展開 a²+2ab+b² を直感的に理解するための面積モデル。
(a+b)² は面積で見ると「a²+2ab+b²」が直感でわかる。

一辺が「a+b」の正方形を考えます。
横方向を「a」と「b」に分け、縦方向も同じように「a」と「b」に分けると、
中は4つの長方形(または正方形)に分かれます。

  • 左上:縦a × 横a → a²
  • 右上:縦a × 横b → ab
  • 左下:縦b × 横a → ab
  • 右下:縦b × 横b → b²

正方形全体の面積は、4つの面積を足したものなので、

(a+b)² = a² + ab + ab + b²
        = a² + 2ab + b²

となります。
これがそのまま、あの有名な公式の「意味」です。


6.(a−b)² と (a+b)(a−b) も面積でわかる

6-1.(a−b)²:なぜ「−2ab」になるの?

つぎに

(a−b)² = a² − 2ab + b²

を同じように面積で考えてみましょう。

(a−b)² を大きな正方形の4領域(a²、−ab、−ab、b²)で示し、多項式の展開 a²−2ab+b² を面積として視覚化した教材用図。引き算のときの「−2ab」が生まれる理由が直感的にわかる構造を示す。
(a−b)² は、a² − 2ab + b² が面積でわかる図になっている。

もともと「一辺 a の正方形」があったと考えます。
そこから「幅 b の帯」を2本引き抜き、最後に「b² の小さな正方形」を戻すイメージです。

  • もとの面積:a²
  • 横方向の帯:ab を1つ引く
  • 縦方向の帯:ab をもう1つ引く
  • 引きすぎた角の部分:b² を足し戻す

よって、

(a−b)² = a² − ab − ab + b²
        = a² − 2ab + b²

となります。
「−2ab」のところには、「帯を2本引いた」という意味があるわけです。


6-2.(a+b)(a−b):なぜ「真ん中の項」が消えて a²−b² になるの?

最後に、

(a+b)(a−b) = a² − b²

を図で見てみましょう。

(a+b)(a−b) を展開すると、

(a+b)(a−b)
= a(a−b) + b(a−b)
= a² − ab + ab − b²

真ん中の「−ab」と「+ab」がちょうど打ち消し合うので、

(a+b)(a−b) = a² − b²

となります。
図でも、真ん中の部分が「プラスとマイナスで打ち消される」形になっているのが分かります。


7.数字で確かめる:(5+2)² を図と計算でつなげる

ここまで「文字 a, b」で考えてきましたが、
数字で一度確認すると、さらに理解が深まります。

(5+2)² を 5cm・2cm に区切った正方形として色分けし、25・10・10・4 の面積に分解して展開の仕組みを説明する黒板シーン。もこあい先生が花のワンポイントをつけて、展開公式を図形と計算でつなげて教えている。
図形と計算を同時に見ると、展開公式が完全に理解できる。

一辺が 5+2 = 7cm の正方形を考えます。すると面積は 7² = 49 です。
これを、5cm の部分と 2cm の部分に分けてみると、

  • 5×5 = 25
  • 5×2 = 10
  • 2×5 = 10
  • 2×2 = 4

4つの面積を足すと、

25 + 10 + 10 + 4 = 49

となり、

(5+2)² = 5² + 2×5×2 + 2²
       = 25 + 20 + 4
       = 49

という形で、(a+b)² の公式とぴったり対応していることがわかります。


8.「広がる」と「収束する」:展開と因数分解のイメージ

ここまで見てきたように、

  • 展開:かけ算の形 → 足し算・引き算の形へ広げる操作
  • 因数分解:足し算・引き算の形 → かけ算の形へまとめる操作

という関係があります。
これは、考え方の「広がる」と「収束する」にもよく似ています。

女性が思考の広がり(放射状矢印)と収束(左向き矢印)を比較している図で、数学記事の“広がる理解と思考整理”を視覚的に示すイラスト。
思考は広がり、そして収束して“本質”に近づく。

まずは「どうなっているんだろう?」と、いろいろな方向へ考えを広げる
そして最後に、「結局いちばん大事なところは何か?」と、考えを収束させていく
展開と因数分解は、まさにこの行き来を数式でやっているようなものです。

だから、

  • 展開を理解する
  • 因数分解へつなげる

という流れをしっかり押さえておくと、
これから学ぶ二次関数・グラフ・方程式の世界がぐっと見通しよくなります。


9.健太の小テスト:自分でもやってみよう

最後に、「分かったつもり」から「実際にできる」に変えるためのミニテストです。
健太と一緒に解いてみましょう。

時間がない日は、問1だけでもOKです。
「ノートに図を1つ写す+問1を解く」だけでも、かなり定着します。

問1:基本の展開

  1. (x+3)² を展開せよ。
  2. (2x−5)² を展開せよ。

問2:(a+b)(a−b) 型

  1. (x+4)(x−4) を展開せよ。
  2. (3a+2)(3a−2) を展開せよ。

問3:少しだけ応用

  1. (2x+1)² を展開しなさい。
  2. (x−1)(x−2) を展開しなさい。
▶ 解答・解説を見る(クリックで開く)

問1の解答

(1) (x+3)²

(x+3)²
= x² + 2×x×3 + 3²
= x² + 6x + 9

(2) (2x−5)²

(2x−5)²
= (2x)² − 2×2x×5 + 5²
= 4x² − 20x + 25

問2の解答

(3) (x+4)(x−4)

(x+4)(x−4)
= x² − 4²
= x² − 16

(4) (3a+2)(3a−2)

(3a+2)(3a−2)
= (3a)² − 2²
= 9a² − 4

問3の解答

(5) (2x+1)²

(2x+1)²
= (2x)² + 2×2x×1 + 1²
= 4x² + 4x + 1

(6) (x−1)(x−2)

(x−1)(x−2)
= x(x−2) − 1(x−2)
= x² − 2x − x + 2
= x² − 3x + 2

ここまでスラスラ解けたなら、「展開の基礎」は合格ラインです。
もし途中でつまずいた問題があれば、
もう一度「図形のイメージ」や「分配法則」のところに戻ってみましょう。


10.今日のまとめ:展開は「意味が分かれば一生モノ」

ここまで読んでくれてありがとう。
最後に、今日の授業で押さえておきたいポイントを、もこあい先生目線でぎゅっとまとめます。

高校数学の展開公式 (a+b)²=a²+2ab+b²、(a−b)²=a²−2ab+b²、(a+b)(a−b)=a²−b² を黒板にチョークで書いた教育イラスト。公式の全体像をひと目で整理できる構図。
3つの展開公式を黒板で視覚的に整理し、全体のつながりをつかむ。

今日のポイントは、次のとおりです。

  • 展開は分配法則を徹底して使う操作
  • (a+b)² の意味は、正方形の面積を4つに分けた図で理解できる
  • (a−b)² の「−2ab」は「帯を2本引いた」イメージ
  • (a+b)(a−b)=a²−b² は、真ん中の項がきれいに打ち消し合う仕組み
  • 数字の例((5+2)²など)で確かめると、公式と図形がつながる
  • 展開と因数分解は「広がる ↔ 収束する」考え方のペアになっている

高校数学の展開公式 (a+b)²、(a−b)²、(a+b)(a−b) を黒板にまとめた図で、3つの公式の関係と“なぜそうなるのか”を整理する学習用イラスト。
3つの展開公式をつなげて理解すると、数学が一気にやさしくなる。

黒板の前で穏やかにほほえむもこあい先生が、数学の本質を理解して次の学習へ進もうと読者にエールを送る締めのシーン。花のワンポイントが世界観をやさしく彩っている。
“本質を理解すれば、数学はもっと面白くなるよ。”

もこあい先生より:
「今日の“なんで?”を大切にしよう。
正解より、考えた道のりが宝もの。」

訂正と追記

この記事の内容は、定期的に見直し・追記を行っています。
新しい説明方法や、より分かりやすい図解が思いついたときは、随時アップデートします。

  • 2025-11-26:初公開版を掲載。
  • 今後、読者の声やご指摘をもとに、例題や図を追加する予定です。

もし誤りや分かりにくい箇所を見つけた場合は、
コメント欄またはお問い合わせフォームから教えていただけると助かります。


参考文献・出典(数学記事用)

※本記事の内容は、以下の教科書・資料・一般的な教科指導内容を参考にしつつ、筆者の言葉で再構成しています。
引用・要約には誤りや解釈の幅があり得ることをご理解ください。

  1. 文部科学省『高等学校学習指導要領 数学I』
  2. 一般的な高等学校 数学I 教科書(多項式・展開・因数分解の章)
  3. 中学校数学教科書(文字式・式の計算・関数の基礎に関する内容)