物語文の心情が分からないときは、気持ちを想像だけで決めようとしなくて大丈夫です。

登場人物の会話・行動・描写を本文から探し、「この言葉があるから、こう感じていると考えられる」と根拠をつなげて読んでいきます。

定期テストやワークでは、「悲しい」「悔しい」と気持ちの名前だけを書くよりも、本文のどの言葉を根拠にしたのかが大切です。

この記事では、物語文の心情を読むための3つの手がかりを、健太と恵子が短い物語を読む場面と一緒に説明します。

中学国語の全体像を先に知りたい人は、中学1年の国語は何を習う?|詩・聞く・話すから始まる学びの地図もあわせて読んでみてください。


「先生、心情問題って、いつも何を書けばいいか分からなくなります」

国語の授業が終わったあと、健太は教科書を開いたまま、小さくため息をつきました。

「本文に『悲しい』って書いてあれば分かるんです。でも、書いていないと、何となくで答えるしかない気がして」

隣にいた恵子も、ノートを見ながらうなずきます。

「私は『悔しい』かなと思っても、別の人は『寂しい』って答えるかもしれないって考えちゃう」

もこあい先生は、二人のノートを見て言いました。

「心情問題は、気持ちを当てる問題ではありません。
本文の中にある言葉を集めて、この人物はなぜそう感じたのかを考える問題です」

今回は、健太と恵子と一緒に、短い物語を読みながら確かめてみましょう。

物語文の心情は、会話・行動・描写から読む

物語文の心情を会話・行動・描写の3つの手がかりから読む方法を示した中学生向け図解

物語文の心情が分からないときは、次の3つを順番に見ます。

  • 会話:その人物は何を言ったか
  • 行動:その人物は何をしたか
  • 描写:どんな場面・景色・音が書かれているか

この3つを本文から拾うと、気持ちの名前を想像だけで決めなくても、根拠をもって読めるようになります。

もこあい先生のポイント
心情問題で最初にやることは、「悲しいかな」「悔しいかな」と悩むことではありません。
まずは、本文の中にある会話・行動・描写に印をつけてみましょう。

まずは、健太と恵子で短い物語を読んでみよう

もこあい先生は、二人に次の文章を見せました。

学級発表の代表が決まったあと、涼太は自分の席に戻った。

「別にいいよ。次があるし」

涼太はそう言って、机の上に置いていた原稿用紙を半分に折った。
けれど、すぐに開き直し、少し曲がった端を指で何度もなぞった。

廊下からは、代表に選ばれた生徒を呼ぶ明るい声が聞こえていた。

文章を読み終えた健太は、すぐに言いました。

「代表に選ばれなかったから、たぶん悲しいんだと思います」

恵子は少し考えてから言います。

「私は悔しいのかなと思いました。でも、どの言葉を根拠にするかは迷います」

もこあい先生は、すぐに正解を言いませんでした。

「どちらの読み方にも理由はありそうですね。では、会話・行動・描写を一つずつ見ていきましょう」

手がかり1|会話から読む

最初に見るのは、その人物が口にした言葉です。

「別にいいよ。次があるし」

この言葉だけを見ると、涼太は本当に気にしていないようにも見えます。

でも、恵子は首をかしげました。

「本当に平気なら、わざわざ『別にいいよ』って言うのかな」

もこあい先生は答えます。

「そうですね。人は、本当に気にしていないときよりも、気にしていることを隠したいときに『別に』と言うことがあります」

ここで大切なのは、会話をそのまま信じて終わらせないことです。

言葉そのものだけでなく、その言葉で何を隠そうとしているのかまで考えると、心情が見えやすくなります。

会話を見るときのチェック

  • どんな言葉を選んでいるか
  • 誰に向かって言っているか
  • 強がりや平気なふりが入っていないか
  • そのあとにどんな行動をしているか

恵子のメモ帳
「大丈夫」「別に」「平気」などの言葉は、本音をそのまま表しているとは限りません。
会話の前後にある行動や描写もセットで見ます。

手がかり2|行動から読む

次に見るのは、その人物が何をしたかです。

涼太はそう言って、机の上に置いていた原稿用紙を半分に折った。
けれど、すぐに開き直し、少し曲がった端を指で何度もなぞった。

涼太は、原稿用紙を捨てたり、しまったりしたわけではありません。

折ったあと、すぐに開き直しています。さらに、端を何度もなぞっています。

健太は、この部分を見て言いました。

「本当に気にしていないなら、こんなふうに原稿用紙を何度もさわらないかもしれません」

もこあい先生はうなずきました。

「いいですね。行動を見るときは、『何をしたか』だけでなく、なぜ今、この行動をしたのかを考えることが大切です」

原稿用紙は、涼太が代表になるために準備していたものかもしれません。

だからこそ、代表に選ばれなかったことを簡単には気持ちの中で片づけられない、と考えられます。

行動を見るときのチェック

  • いつもと違う行動か
  • 何度も繰り返している行動か
  • 急に止まる、黙る、目をそらす行動はないか
  • 本当は必要ないのにしている行動はないか

手がかり3|描写から読む

最後に見るのは、場面の描写です。

廊下からは、代表に選ばれた生徒を呼ぶ明るい声が聞こえていた。

これは、涼太自身の言葉ではありません。

けれど、代表に選ばれた生徒を呼ぶ明るい声が聞こえることで、涼太が選ばれなかったことが、より強く感じられます。

恵子は言いました。

「自分は選ばれなかったのに、廊下では明るい声がしているから、余計につらそうです」

もこあい先生は答えます。

「その読み方でいいですね。描写は、登場人物の気持ちを直接言い切るものではありませんが、場面の空気や気持ちの重なりを伝える手がかりになります」

ここで大切なのは、『明るい声』だけで気持ちを決めつけないことです。

会話や行動とつなげて読むことで、描写が心情を支える根拠になります。

描写を見るときのチェック

  • 誰の目や耳に入っている景色・音か
  • どんな出来事の直後に描かれているか
  • 明るさ・音・色・温度にどんな特徴があるか
  • 会話や行動とどうつながるか
物語文の例文に会話・行動・描写の3つの手がかりを色分けして示した中学生向け読解図

3つの手がかりをつなげると、心情が見えてくる

手がかり 本文の言葉 そこから考えられること
会話 「別にいいよ。次があるし」 本当の気持ちを隠し、平気なふりをしている。
行動 原稿用紙を折ったあと、すぐに開き直した 代表に選ばれなかったことを、まだ気持ちの中で整理できていない。
描写 廊下から聞こえる明るい声 代表に選ばれた生徒と自分との差や、取り残された感じを強めている。

健太は、もう一度文章を読み直して言いました。

「涼太は、代表に選ばれなかったことを悔しく感じている。
でも、『別にいいよ』と言って、平気なふりをしているんだと思います」

恵子も付け足します。

「原稿用紙をすぐに開き直しているから、まだ気持ちを切り替えられていないって書けそうです」

もこあい先生は言いました。

「その通りです。『悔しい』という言葉が本文になくても、会話・行動・描写をつなげると、根拠をもって心情を考えられます」

記述問題では、根拠と心情をつなげて書こう

この場面を記述問題で答えるなら、次のように書けます。

涼太は、代表に選ばれなかったことを悔しく感じているが、その気持ちを隠して平気なふりをしている。
「別にいいよ」と言いながら、原稿用紙をすぐに開き直し、端を何度もなぞっているから。

心情問題では、頭の中で次の順番を作ると書きやすくなります。

本文の言葉 → そこから分かること → 心情

基本の形は、次の通りです。

主人公は、_____と感じている。
「_____」とあることから、_____と考えられる。

「気持ちの名前だけ」で終わらせず、本文の言葉とセットで書くことを意識しましょう。

心情の変化は、前と後を比べて読む

物語文の心情変化を前・きっかけ・後の3段階で整理した中学生向けミニ図解

定期テストでは、「どんな気持ちか」だけでなく、心情がどう変化したかを問われることがあります。

そのときは、次の順番で考えると読みやすくなります。

  1. 最初はどう思っていたか
  2. 途中で何が起きたか
  3. 最後にどう変わったか
  4. 変化のきっかけになった会話・行動・描写はどこか

特に、次のような言葉の後は、気持ちや場面が動きやすいです。

  • けれど
  • しかし
  • ところが
  • そのとき
  • ふと

たとえば、今回の文章でも、

原稿用紙を半分に折った。
けれど、すぐに開き直し……

という流れから、気持ちを切り替えたように見えて、実は切り替えきれていないことが読み取れます。

もこあい先生のポイント
心情変化の問題では、「前」と「後」を比べます。
一か所だけを見るのではなく、変化のきっかけになった出来事に注目してみましょう。

「悲しい・寂しい・悔しい」で迷ったときの考え方

心情問題では、似た気持ちの言葉で迷うことがあります。

そんなときは、言葉を暗記で選ぶのではなく、本文にいちばん近い言葉を考えます。

迷いやすい言葉 考える目安
悲しい・寂しい 失ったことのつらさか、一人になった感じか
悔しい・恥ずかしい うまくいかなかったことへの思いか、人からどう見られるかへの思いか
不安・緊張 これから起きることが心配か、その場で強く張りつめているか
安心・うれしい 心配が消えたのか、願いがかなったのか

たとえば今回の文章なら、ただつらいだけでなく、代表に選ばれなかったことへの思いが強いので、「悔しい」が近いと考えられます。

本文にないことを足しすぎないことも大切

心情を読むときは、想像を広げすぎないことも大切です。

たとえば、

原稿用紙を見ていた → 家で親に怒られるのがこわい

のように、本文に書かれていない事情まで足してしまうと、読解から離れてしまいます。

今回の文章から言えるのは、代表に選ばれなかったことを気にしている平気なふりをしているといった範囲です。

国語の答えでは、本文に書かれている会話・行動・描写から言えることを大切にしましょう。

設問によって、答え方を少し変えよう

同じ本文でも、問題の聞き方によって答え方が変わります。

設問 答え方
涼太の心情を答えなさい 気持ちを中心に書く
涼太がそう感じた理由を答えなさい 出来事や本文の根拠を書く
涼太の心情の変化を答えなさい 最初 → きっかけ → 最後の順で書く
「別にいいよ」と言った理由を答えなさい 本音と、表に出した言葉の違いを考える

設問文をよく読み、何を答える問題なのかを最初に確認すると、書く内容が整理しやすくなります。

スクショ保存用|心情問題で迷ったら、この3ステップ

テストやワークで心情問題に止まったときは、次の順番で本文を見直してみましょう。

ステップ すること 自分に聞くこと
1.場面をつかむ 直前に何が起きたかを確認する この人物に、今どんな出来事があった?
2.手がかりを集める 会話・行動・描写に線を引く 何を言った? 何をした? どんな場面?
3.根拠つきで書く 本文の言葉と心情をつなげる 「___」とあるので、___と考えた。

答えの形
主人公は、_____と感じている。
「_____」とあることから、_____と考えられる。

気持ちの名前を先に当てようとしなくて大丈夫です。
本文の言葉を一つ見つける → そこから考える、この順番で進めましょう。
物語文の心情問題で迷ったときに場面確認・手がかり探し・根拠つきで書くの3ステップをまとめた保存用シート

答えを書く前の3問チェック

最後に、答案を書く前に次の3つを確認してみましょう。

  • 本文の言葉を根拠にしている?
  • 気持ちだけでなく、なぜそう考えたかも書いた?
  • 設問が聞いていることに答えている?

この3つを確認するだけでも、「何となく書いた答え」から一歩進みやすくなります。

今日できる最小行動|会話・行動・描写に1つずつ線を引こう

次に物語文を読むときは、全部を完璧に読もうとしなくて大丈夫です。

まずは、次の3つに1つずつ線を引いてみましょう。

  • 会話を1つ
  • 行動を1つ
  • 描写を1つ

そのあと、次の1文だけを書いてみてください。

「_____」とあるので、主人公は_____と感じていると考えた。

最初は、根拠が1つでも大丈夫です。
慣れてきたら、会話と行動、行動と描写のように、2つの手がかりをつなげてみましょう。

まとめ|心情は、本文の言葉から考える

物語文の心情問題で迷ったときは、気持ちを当てようとしないことが大切です。

  • 会話から、その人物が何を言ったかを見る
  • 行動から、その人物が何をしたかを見る
  • 描写から、その場面がどんな空気かを見る
  • 本文の言葉を根拠にして、心情を書く

心情が分からないのは、才能がないからではありません。

まだ、本文の中にある手がかりを集める読み方に慣れていないだけです。

もこあい先生からのひとこと
物語文は、「この人は何を感じているのだろう」と考える練習です。答えを急がず、会話・行動・描写を一つずつ拾ってみましょう。本文の言葉に戻れるようになると、心情問題は少しずつ怖くなくなります。

「今日の“なんで?”を大切にしよう。正解より、考えた道のりが宝もの。」

よくある質問

心情を表す言葉が本文にないときは、どうすればいいですか?

会話、行動、描写を根拠にして考えます。本文に「悲しい」と書かれていなくても、黙る、目をそらす、一人で立ち尽くすなどの表現から、気持ちを考えられることがあります。

「悲しい」か「寂しい」かで迷います。

どちらが本文の様子に近いかを考えましょう。失ったことへのつらさが中心なら「悲しい」、一人になったことや取り残された感じが中心なら「寂しい」が近い場合があります。ただし、本文の根拠が最優先です。

心情は複数書いてもよいですか?

書いてもかまいませんが、気持ちを並べるだけでは伝わりにくくなります。「悔しいが、平気なふりをしている」のように、中心の気持ちと表に出している様子を分けて書くと整理しやすいです。

描写は必ず登場人物の心情を表していますか?

必ずではありません。場面を具体的に見せるための描写もあります。会話や行動、前後の出来事とつなげて読むことが大切です。

物語の人物を、もう少し深く考えてみたい人へ

物語文の心情を本文の言葉から考える力は、難しい作品を読むときにも役立ちます。

登場人物の気持ちは、「悲しい」「悔しい」だけでは言い切れないことがあります。作品の中で気になった言葉や、引っかかった場面を手がかりにして、自分の考えを少しずつ深めていきましょう。

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次に読む

物語文で「本文の言葉を根拠に考える」読み方に慣れてきたら、次は詩の読み方にも挑戦してみましょう。

参考文献・出典

  • 文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編』