もこあい先生:

みなさんは、日本語を勉強している人から、

「どうして『来ます』が『いらっしゃいます』になるんですか?」
「尊敬語と謙譲語は、何が違うんですか?」
「どうして相手によって言い方が変わるんですか?」

と聞かれたら、どう説明しますか?

日本語を普段から使っている私たちでも、
理由まで説明しようとすると、

「あれ? どうしてだったかな?」

と考えてしまうことがあります。

私たちの近所には、日本語を勉強している
もこコトネという女の子が住んでいます。

低めのツインテールと星形のヘアピンが目印。
気になった言葉や「なんで?」と思ったことを、
カラフルな付箋のついた
「ことばノート」
に書き留めています。

そして、分からないことがあると、


「なんで?」
「どうして?」

と自然に聞いてきます。

そんなもこコトネの質問に答えようとしていると、
健太や恵子、そして私自身も、
普段は何となく使っていた日本語について
考え直すことがあります。

この記事では、日本語の敬語を一方的に
「教えてあげる」
ことを目標にはしません。


相手が何を知りたいのかを聞く。
相手に伝わりやすい言葉を考える。
分からなければ一緒に調べる。
そして、相手自身が話したい範囲で、言葉や考え方についても聞いてみる。

そんな「敬語を伝え合う方法」を、
もこコトネ、健太、恵子と一緒に考えていきましょう。

もこコトネが「敬語って、どうして言い方が変わるの?」と健太・恵子・もこあい先生に質問し、4人で考え始める場面。

目次
  1. この記事でわかること
  2. 日本語について説明する機会は、身近なところにもある
  3. まず「外国の方」と一括りにしない
  4. 説明する前に「何を知りたい?」と聞いてみよう
  5. 健太、「目上の人には尊敬語」だけで説明できる?
  6. 敬語は「誰の動作?」だけでは決まらない
  7. 敬語を説明する前に「やさしい日本語」を使ってみよう
  8. 「正しい」だけでは伝わらない|4つの視点で考えよう
  9. 「あなたの言葉ではどうする?」と聞いてみよう
  10. 分からないときは、一緒に調べればいい
  11. 健太・恵子・もこコトネ、一緒に説明を作り直してみる
  12. 敬語の間違いは、全部すぐ直した方がいい?
  13. 「教える人」と「教わる人」に固定しなくてもいい
  14. 保存用|敬語を伝えるときの7項目チェック
  15. まとめ|敬語を伝えることは、一緒に考えることでもある
  16. あわせて読みたい
  17. 参考文献・出典

この記事でわかること

  • 日本語を学ぶ人に敬語を説明するとき、最初に確認したいこと
  • 相手を「外国の方」と一括りにしない考え方
  • 敬語を「やさしい日本語」で伝えるときの考え方
  • 正確さと分かりやすさを両立するための4つの視点
  • AI・辞書・本・図書館・ネットを使った調べ方
  • 敬語の間違いを直すときに考えたいこと
  • 説明する側と聞く側の両方が学べる理由

日本語について説明する機会は、身近なところにもある

出入国在留管理庁が2026年3月27日に公表した資料によると、
2025年末の在留外国人数は
412万5,395人
でした。

前年末より35万6,418人、率にして9.5%増え、
初めて400万人を超えています。


出典:

出入国在留管理庁
「令和7年末現在における在留外国人数について」

(2026年3月27日公表)

ただし、この数字を見て、


「外国人が増えた=日本語を勉強している人が増えた」

と単純につなげることはできません。

日本語を長く使っている人もいれば、
日本で生まれ育った人もいます。

一人ひとり、使っている言葉、文化的な背景、
日本語を使ってきた経験は違います。

それでも、学校、大学、職場、アルバイト先、地域などで、
日本語を母語としない人と話したり、
日本語について質問されたりする場面はあります。

そんなとき、


「日本人だから、正しい日本語を全部説明しなくてはいけない」

と構える必要はありません。

分からなければ、


「それ、どうしてだろう。一緒に調べてみようか」

と考えることもできます。

まず「外国の方」と一括りにしない

敬語について話すとき、
最初に大切にしたいことがあります。

それは、


「外国の方だから、敬語が分からないだろう」

と、最初から決めつけないことです。

国や地域が違えば、
使っている言語や文化もさまざまです。

さらに、同じ国や同じ言語を使う人であっても、
経験は一人ひとり違います。

  • 日本語を勉強し始めたばかりの人
  • 何年も日本語を勉強している人
  • 日本の学校で学んでいる人
  • 仕事で毎日日本語を使っている人
  • 日常生活ではほとんど困らない人

では、必要な説明も違います。

また、その人が普段使っている言葉にも、

  • 先生と友達で話し方を変える
  • 年上の人への呼び方を変える
  • 親しい人とそうでない人で表現を変える

など、日本語とは違う方法で
敬意や距離を表す仕組みがあるかもしれません。

だから、


「外国には敬語がないから、日本語の敬語は難しい」

のように一括りにするのではなく、
まず目の前の相手に聞いてみます。

「どこが分かりにくかった?」

そこから始める方が自然です。


※この記事でも、もこコトネを特定の国・地域・母語を
代表する人物としては描いていません。
一人の日本語学習者として登場します。

説明する前に「何を知りたい?」と聞いてみよう

敬語について質問されたからといって、
相手が敬語の仕組みを全部知りたいとは限りません。

たとえば、


「明日のアルバイトで、店長に何て言えばいい?」

と聞いている人に、
尊敬語・謙譲語・丁寧語の分類を最初からすべて説明しても、
今知りたいことには答えていないかもしれません。

最初に、目的を確認してみましょう。

  • 今すぐ使える言い方を知りたい?
  • なぜその表現になるのか知りたい?
  • 学校の勉強として理解したい?
  • 自分の敬語が自然か確認したい?
  • 間違っているところを直してほしい?


相手の質問を聞く前に、こちらが答えを決めない。

これが、伝わる説明の最初の一歩です。

健太、「目上の人には尊敬語」だけで説明できる?

ある日、もこコトネが健太に聞きました。

もこコトネ:
「健太、尊敬語って、いつ使うの?」

健太:
「先生とか、目上の人に使うんだよ」

もこコトネ:
「じゃあ、会社の社長には、いつでも尊敬語を使うの?」

健太:
「えーっと……。
会社の外の人に社長のことを話すときは……あれ?」

そこへ恵子がやって来ました。

恵子:
「『目上の人だから』だけでは
説明できない場合もあるんじゃない?」

健太:
「そう言われると、使うより説明する方が難しいな……」

もこコトネの「なんで?」によって、
健太自身も敬語について考え始めました。

会社では、社外の人に自社の上司について話すとき、
その上司を「自分側(ウチ)」
として扱う場合があります。

たとえば文化庁の敬語資料でも、
取引先など外部の人に自社側の人物について話す場面を通して、
「ウチ」と「ソト」の関係が敬語に関わる例が紹介されています。


参考:

文化庁「敬語おもしろ相談室|ウチとソト」

ただし、


敬語は「ウチ・ソト」だけで機械的に決まるものでもありません。

誰と話しているのか。
誰について話しているのか。
どんな場面なのか。

いくつもの関係を見ながら考える必要があります。

もこコトネに「社長にはいつでも尊敬語?」と聞かれ、健太が説明に詰まり、恵子が「目上だけでは説明できない」と整理する場面。

敬語は「誰の動作?」だけでは決まらない

尊敬語と謙譲語を考えるとき、

「誰がその動作をしているの?」

と確認することは、最初の手掛かりになります。

たとえば、

「先生が来ます」なら、先生の動作。

「私が先生のところへ行きます」なら、
私の動作です。

こうして動作をする人を確認すると、
敬語を整理しやすくなる場合があります。

しかし、


「誰の動作?」だけですべての敬語が決まるわけではありません。

実際には、

  • 誰と話しているのか
  • 誰について話しているのか
  • どんな場面なのか
  • 相手との関係はどうなのか
  • 自分側・相手側という関係はどうなっているのか

なども関係します。

文化審議会の「敬語の指針」でも、
敬語について、人間関係や場面などを踏まえて
考えることが示されています。


参考:

文化審議会「敬語の指針」

(2007年2月2日)

この記事では、
尊敬語・謙譲語・丁寧語そのものを詳しく繰り返しません。

詳しい違いや基本的な見分け方は、
こちらの記事で整理しています。


尊敬語・謙譲語・丁寧語の違いを詳しく見る

ここからは、


「分かったことを、どう相手に伝えるか」

に集中していきましょう。

敬語を説明する前に「やさしい日本語」を使ってみよう

敬語を説明しようとして、
説明そのものが難しくなってしまうことがあります。

たとえば、

「これは相手側の人物の行為に敬意を表す尊敬表現で……」

と言われても、
日本語を勉強し始めた人には、
説明の言葉そのものが難しいかもしれません。

そこで役立つ考え方の一つが、
「やさしい日本語」
です。

出入国在留管理庁と文化庁は、
2020年8月28日
「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」を公表しました。

このガイドラインは、
主に国や地方公共団体などが、
日本に住む外国の方へ情報を伝える際の
「やさしい日本語」の活用について整理したものです。


この記事では、その考え方を、
敬語を説明するときの伝え方にも応用して考えてみます。


参考:

出入国在留管理庁・文化庁
「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」

(2020年8月28日公表)

たとえば、次のように言い換えられる場合があります。

少し難しい言い方 より分かりやすくする例
ご不明な点はございますか? 分かりにくいところはありますか?
こちらの内容をご確認ください。 この内容を見て、間違いがないか確認してください。
御理解いただけましたでしょうか? ここまでで、分かりにくいところはありますか?

ここで気を付けたいことがあります。


やさしい日本語は、
「相手の日本語が下手だから、簡単な言葉にしてあげる」
という考え方ではありません。

目の前の相手に、
どうすればより伝わりやすいかを考えるための
方法の一つとして使います。

また、

短くすれば何でも良いわけではありません。

簡単にしすぎて意味そのものを変えてしまったら、
正確な説明ではなくなります。

大切なのは、


難しい言葉を減らす。
でも、大切な意味までは減らさない。

というバランスです。

「正しい」だけでは伝わらない|4つの視点で考えよう

文化庁の
「分かり合うための言語コミュニケーション」では、
言葉によるコミュニケーションを考えるときの要素として、
次の四つが示されています。

視点 考えてみたいこと
正確さ 説明している内容を間違えていない?
分かりやすさ 相手が理解できる言葉になっている?
ふさわしさ 今の場面や相手の目的に合っている?
敬意と親しさ 相手と、お互いに心地よい距離で話せている?


参考:

文化審議会国語分科会
「分かり合うための言語コミュニケーション(報告)」

(2018年3月2日)

① 正確さ

内容そのものが間違っていないか確認します。

たとえば、


「目上の人には全部、尊敬語を使えばいい」

と説明すれば簡単ですが、
実際にはそれだけで説明できない場面があります。

② 分かりやすさ

内容が正しくても、
難しい言葉ばかりでは伝わりません。

専門用語を使うなら、
具体的な会話や短い例と一緒に説明できないか考えます。

③ ふさわしさ

相手が今知りたいことに合った説明なのかを考えます。

明日のアルバイトで使う一言を聞いている人に、
敬語の仕組みを最初から最後まで説明する必要は
ないかもしれません。

④ 敬意と親しさ

「自分は日本語を教える側だから」と、
必要以上に上から話していないかも考えます。

反対に、親しさを出そうとして、
相手が望んでいない距離まで
近づきすぎることにも注意が必要です。


相手への敬意を保ちながら、
お互いが心地よいと感じられる距離で話せているか。

そこまで含めて考えてみます。

つまり、


「正しい説明」と「伝わる説明」は、同じではありません。

正確さを保ちながら、
目の前の相手に合った伝え方を考えていきます。

敬語を伝えるときに確認したい「正確さ・分かりやすさ・ふさわしさ・敬意と親しさ」の4つの視点をまとめた図。

「あなたの言葉ではどうする?」と聞いてみよう

もこコトネが恵子に聞きました。

もこコトネ:
「日本語って、相手によって言葉が変わることがあるんだね」

恵子:
「もこコトネが普段使っている言葉では、どうなの?」

もこコトネ:
「私が普段使う言葉では、
先生と友達で話し方を変えることもあるよ」

健太:
「へえ。日本語と違うところだけじゃなくて、
似ているところもあるのかな?」

ここで大切なのは、

「外国ではどうなの?」

と大きく一括りにしないことです。

こちらが想像だけで、

「○○の国では、きっとこう考える」

と決める必要もありません。

目の前の相手に、

  • あなたが普段使っている言葉ではどうする?
  • 先生と友達では話し方が変わる?
  • 今の説明で、分かりにくかったところはある?

と聞いてみることができます。

ただし、


相手が自分の母語や文化的な背景について
話したいとは限りません。

聞かれたくなさそうなときや、
本人が答えたくないときは、
無理に聞く必要はありません。

大切なのは、


「外国の方だから、文化について教えてもらおう」
と決めることではなく、
相手が話したいことに耳を傾けることです。

相手が話してくれたときには、
敬語を一方的に説明していた会話が、

お互いの言葉について考える会話

に変わっていくこともあります。

分からないときは、一緒に調べればいい

日本語を母語として使っていても、
敬語について何でも説明できるとは限りません。

迷ったら、


「分からないから、一緒に確認してみよう」

で大丈夫です。

曖昧な記憶だけで断定するより、
調べて確かめる方が安心です。

そして、調べる方法は一つではありません。

AI|説明の言い換えや別の観点を探す

生成AIは、
敬語の答えをそのまま決めてもらうためだけではなく、


「どう説明すれば伝わりやすいか」

を考える補助として使えます。

たとえば、

この敬語の説明を、
日本語を勉強し始めた人にも分かる短い日本語にしてください。

専門用語をなるべく使わず、
具体例を一つ使って説明してください。

この説明で、
誤解される可能性があるところを挙げてください。

などと聞くことができます。

ここで大切なのは、


AIに「正しいかどうか」を最終決定してもらわないこと。

AIが出した候補を見て、

「本当にそうなのかな?」

と別の資料でも確認します。

おすすめしたいのは、


AIで説明案や注意点の候補を出す

信頼できる資料で確認する

相手本人に伝わったか確認する

という流れです。

辞書|言葉そのものの意味を確認する

一つの言葉の意味や使い方を確認したいなら、
辞書が役立ちます。


「自分が思っていた意味と本当に同じかな?」

と確認するだけでも、
説明の精度を上げることができます。

本・図書館|敬語をまとまりとして理解する

一つの表現だけではなく、


「どうしてこういう仕組みになっているの?」

まで落ち着いて調べたいときは、
本も役立ちます。

図書館なら、

  • 敬語についての本
  • 国語辞典
  • 日本語文法の本
  • 日本語教育についての本
  • 異文化コミュニケーションについての本

などを探すことができます。

ネットでは一部分だけ見つかる情報でも、
本なら前後の考え方を含めて読めることがあります。

ネット|公式資料や複数の情報を確認する

ネットには、敬語について多くの記事があります。

個人サイトやブログにも、
分かりやすい説明はあります。

一方で、


検索結果の上位に出たから、必ず正しい

とは限りません。

敬語について迷ったときは、
文化庁などの公的資料も確認できます。

  • 文化庁「敬語の指針」
  • 文化庁「敬語おもしろ相談室」
  • 文化庁「言葉に迷ったときのヒント-敬語編-」
  • 国立国語研究所の資料
  • 国際交流基金の日本語教育資料

文化庁の
「言葉に迷ったときのヒント-敬語編-」
では、「敬語の指針」の内容の一部が短編アニメで紹介されています。

文章だけでは分かりにくいと感じたときに、
こうした動画資料から確認してみる方法もあります。


参考:

文化庁「言葉に迷ったときのヒント-敬語編-」

(2025年4月7日公開)

最後は、相手本人に聞く

AIや本で正しい説明を作っても、


その説明が相手に伝わったかどうか

は、相手本人に聞かなければ分かりません。

そこで、

  • 今の説明で、分かりにくかったところはある?
  • もう少し具体的な例があった方が分かりやすい?
  • どの部分をもう一度確認したい?

と聞いてみます。

説明は、一回で完成させなくてもいいのです。

AI、辞書、本・図書館、ネット・公的資料、相手本人という5つの調べ方を使い分け、「一つだけで決めない」と示した図。

AI・検索・本をどう使い分けるかについては、
こちらの記事でも詳しく整理しています。



AI時代の情報リテラシー|
検索・本・AIを使い分けて正しい情報に近づく方法

健太・恵子・もこコトネ、一緒に説明を作り直してみる

最初、健太はもこコトネに、


「目上の人には尊敬語を使うんだよ」

と説明しました。

でも、もこコトネの質問によって、
それだけでは説明できないことに気付きました。

健太:
「さっきの説明、ちょっと簡単にしすぎたかも」

恵子:
「まず、もこコトネが何を知りたいのか聞いてみようよ」

健太:
「もこコトネは、敬語を全部勉強したいの?」

もこコトネ:
「全部じゃなくて、先生に話すときに、
どうして言葉が変わるのか知りたい」

健太:
「なるほど。それなら、
そこから考えた方がよさそうだね」

三人は、文化庁の資料や本を確認しました。

AIにも、


「専門用語を少なくして説明すると、
どんな言い方が考えられる?」

と聞いてみました。

そして健太は、説明を作り直します。

健太:
「日本語の敬語は、
『誰がする動作か』を見ると考えやすくなる場合があるんだ。
でも、話している相手や場面でも変わるから、
それだけで全部決まるわけじゃないみたい」

もこコトネ:
「うん。さっきより分かりやすい!」

恵子:
「最初より正確だし、
もこコトネが知りたかったことにも近くなったね」

ここで学んだのは、
もこコトネだけではありません。


健太も、自分が何となく使っていた日本語を
理解し直しています。

健太・恵子・もこコトネが「誰の動作?」「相手は?」「場面は?」「伝わった?」と書かれたことばノートを囲み、敬語の説明を作り直す場面。

敬語の間違いは、全部すぐ直した方がいい?

日本語を学んでいる人が、
少し不自然な敬語を使うこともあります。

そんなとき、


間違いを見つけたら、全部すぐ直した方がよいのでしょうか。

ここでも、相手の目的を確認できます。

たとえば、


「敬語も、間違っていたら直してほしい?」

と聞いてみます。

「仕事で使うから、間違っていたら教えてほしい」
という人もいるでしょう。

一方で、

「今はまず会話を続けたい」

という人もいるかもしれません。

もちろん、意味が大きく変わってしまう表現や、
仕事・接客などで重要な言い方は、
確認した方がよい場合があります。

でも、

訂正すること自体を目的にしない。

まず、相手が何を伝えようとしているのかを受け取る。

その上で必要なら、


「その場面では、こちらの言い方の方が自然だよ」

と伝える方法もあります。

アルバイト先で使う具体的な敬語や、
自然な言い方については別の記事で詳しく扱っています。


バイト先の敬語について詳しく見る

「教える人」と「教わる人」に固定しなくてもいい

もこコトネに敬語を説明していた健太も、

「どうして?」

と聞かれたことで、
自分の日本語を考え直しました。

恵子も、


「説明する前に、
相手が何を知りたいのか聞けばいい」

という視点を出しました。

そして、もこコトネから、


「私が普段使う言葉では、
先生と友達で話し方を変えることもあるよ」

と教えてもらうこともあります。

これは、


もこコトネ自身の経験について話しているものです。

同じ国や同じ言葉を使う人すべてが
同じ考え方をする、という意味ではありません。

つまり、

日本人=教える人
日本語を学ぶ人=教わる人

と固定する必要はありません。

今日は日本語について健太が説明する。

別の日には、
もこコトネから別の言葉や考え方について教えてもらう。

それでいいのです。

敬語について話すことが、


お互いの言葉や考え方を知るきっかけ

にもなります。

保存用|敬語を伝えるときの7項目チェック

日本語を学ぶ人に敬語について聞かれたら、
次の7つを確認してみましょう。

  1. 相手を一括りにしていない?
    「外国の方だから」と、
    最初から理解度を決めつけない。
  2. 何を知りたいのか聞いた?
    今すぐ使いたいのか、
    理由を知りたいのかを確認する。
  3. 難しい日本語で説明していない?
    やさしい日本語に言い換えられないか考える。
  4. 簡単にしすぎて間違っていない?
    分かりやすさだけを優先して、
    大切な意味を落とさない。
  5. 分からないことを無理に断定していない?
    AIだけで決めず、
    本、辞書、公的資料などでも確認する。
  6. 本人に伝わったか聞いた?
    説明しただけで終わらせない。
  7. 相手の言葉や考え方について聞くとき、無理をさせていない?
    その人自身が話したい範囲で聞く。
    文化の代表者として答えを求めない。

全部を一度にできなくても構いません。

大切なのは、


相手に「正解を渡すこと」だけを目的にしないこと。

話す。
聞く。
調べる。
もう一度伝えてみる。

その繰り返しで、
少しずつ分かり合えるようになります。

日本語を学ぶ人に敬語を伝えるときの「一括りにしない、目的を聞く、やさしく伝える、確認する」など7項目をまとめた保存用チェック画像。

まとめ|敬語を伝えることは、一緒に考えることでもある

もこあい先生:

日本語を学んでいる人から敬語について質問されたとき、
日本人だからといって、
すぐに全部答えられなくても大丈夫です。

まず、

「何が分かりにくかった?」

と聞いてみる。

説明が難しければ、
相手に伝わりやすい日本語に変えてみる。

自分でも分からなければ、
AI、本、辞書、図書館、ネット、公的資料などを使って
一緒に確認する。

そして、相手が話したいようなら、


「あなたが普段使っている言葉では、どうするの?」

と聞いてみる。

もちろん、
話したくないことまで無理に聞く必要はありません。

敬語を伝えることは、
日本語のルールを一方的に教えることだけではありません。

相手の考え方にも耳を傾けながら、
自分自身の日本語も理解し直していく。

そこには、


説明する側にも、聞く側にも学べることがあります。

もこコトネの「なんで?」から、
健太も恵子も新しいことに気付きました。

私たちも、
普段「知っているつもり」になっている言葉ほど、
もう一度、

「なんで?」

と考えてみてもいいのかもしれません。


今日の“なんで?”を大切にしよう。
正解より、考えた道のりが宝もの。

あわせて読みたい

尊敬語・謙譲語・丁寧語そのものを詳しく知りたい人へ


尊敬語・謙譲語・丁寧語の違いを詳しく見る

この記事では詳しく扱わなかった、
敬語の種類や
「誰の動作?」から考える基本を整理しています。

アルバイト先で使う敬語を知りたい人へ


バイト先の敬語と自然な言い方を詳しく見る

店長・先輩・お客様との会話など、
実際のアルバイト場面を中心に扱っています。

AI・検索・本の使い分けを詳しく知りたい人へ


AI時代の情報リテラシー|
検索・本・AIを使い分けて正しい情報に近づく方法

AIだけを正解にせず、
検索や本とどう組み合わせて確認するかを
詳しく整理しています。

参考文献・出典


本記事では、公的資料を参考にしながら、
敬語そのものを体系的に解説することではなく、
「日本語を学ぶ人に、敬語をどう伝えるか」
という観点を中心に整理しています。


日本語の理解度、言語的・文化的背景、
敬語を必要とする場面は一人ひとり異なります。
そのため、特定の国・地域・言語を一括りにして説明せず、
目の前の相手本人に確認しながら考えることを
この記事の基本姿勢としています。
また、相手が自身の母語や文化的背景について
話したくない場合には、無理に聞かないことも大切にしています。