『銀河鉄道の夜』の読書感想文が書けない人へ|「ほんとうのさいわい」とは何かを考える
『銀河鉄道の夜』を読み終わったけれど、
「きれいな話なのは分かる。でも、結局どういう話?」
「カムパネルラはどうなったの?」
「“ほんとうのさいわい”って何?」
と、かえって分からないことが増えてしまった。
そんな人もいるかもしれません。
でも、この作品では、
「分からない」ことが、読書感想文を書く邪魔になるとは限りません。
むしろ、
「どうしてだろう?」
と思ったところから、自分だけの感想文が始まります。
この記事では、『銀河鉄道の夜』の意味を一つに決めようとはしません。
代わりに、次の3つの問いを持って、ジョバンニと一緒に物語をたどってみます。
| 最初に持っておきたい問い | 考えてみたいこと |
|---|---|
| 銀河鉄道の旅は何だったのか? | ジョバンニは旅の前と後で何が変わった? |
| 「ほんとうのさいわい」とは何か? | 誰かを助けること? 自分を大切にすること? |
| 現実に戻ったジョバンニは何をするのか? | 別れのあと、人はどう生きていく? |
今は答えられなくても大丈夫です。
この記事の最後で、もう一度この3つの問いに戻ってきます。
※ここから先は、『銀河鉄道の夜』の結末に触れます。
- まずはあらすじ|感想文を書くために物語の流れをつかもう
- コラム|そもそも読書感想文って、何を書くもの?
- 知っておきたい|『銀河鉄道の夜』には「完成稿」が残されていない
- 旅に出る前のジョバンニを見てみよう
- 銀河鉄道で起きたことを全部理解しなくてもいい
- さそりは、なぜ自分の命の使い方を後悔したのか
- 「ほんとうのさいわい」の答えを、登場人物も知らない
- ここで考えてみよう|あなたなら「ほんとうのさいわい」を何だと思う?
- カムパネルラの行動を「自己犠牲」の一言だけで終わらせない
- 「戻らない友達」と「戻ってくるかもしれない父」
- 銀河の果てまで旅をして、最後に持って帰るのは「牛乳」だった
- もしかすると大切なのは「銀河鉄道に乗ったこと」より「戻ってきたこと」かもしれない
- 最初のジョバンニと、戻ってきたジョバンニを比べてみる
- ところで――「完成していない作品」の話を覚えていますか?
- どの場面を書けばいい?|感想文にしやすい3つの入口
- 同じ作品を読んでも、感想は一つではない
- 「感想が浅いかも」と思ったら、もう一つだけ問いを足す
- あなたも「気になった言葉」を一つメモしてみよう
- 感想文は「考えが動いた順番」で書いてみよう
- 「私は分からなかった」から書き始めてもいい
- タイトルに迷ったら|こんな方向もあります
- 最初の3つの問いに戻ってみよう
- まとめ|答えではなく「問い」を持って帰ってもいい
- 次に読むなら|考えることを楽しむ関連記事
- 参考にした主な資料
まずはあらすじ|感想文を書くために物語の流れをつかもう
『銀河鉄道の夜』は、
孤独を感じながら暮らす少年ジョバンニが、
親友カムパネルラと不思議な銀河鉄道を旅する物語です。
ジョバンニは学校に通いながら働き、
病気の母を気づかって暮らしています。
父親は長く家を離れていて、
そのことを同級生からからかわれることもあります。
仲のよかったカムパネルラとも少し距離ができ、
ジョバンニは周囲の友達の輪にうまく入れません。
銀河のお祭りの夜。
一人で丘にいたジョバンニは、
いつの間にか不思議な列車に乗っています。
そして隣には、カムパネルラがいました。
二人は銀河鉄道に乗り、
プリオシン海岸や鳥捕りなど、
不思議な場所や人々に出会いながら旅を続けます。
その旅の途中では、
さそりの火の話や人々との出会いを通して、
「誰かのために生きるとはどういうことか」
「ほんとうのさいわいとは何か」
と考えたくなる場面がいくつも出てきます。
ところが旅の終わりが近づくと、
カムパネルラは突然ジョバンニの前から姿を消します。
ジョバンニが目を覚ますと、そこはもとの丘でした。
そして現実の世界で、
カムパネルラが川に落ちたザネリを助け、
そのあと戻ってこなかったことを知ります。
その一方でジョバンニは、
自分の父がもうすぐ帰ってくるかもしれないという知らせも受け取ります。
そして最後には、
母へ牛乳と父の知らせを届けようと、現実の生活へ戻っていきます。
つまり『銀河鉄道の夜』は、
単に「二人の少年が銀河を旅する物語」というだけではありません。
孤独を抱えていたジョバンニが、
誰かの幸せや別れについて考え、
簡単な答えを見つけられないまま現実へ戻っていく物語
として読むこともできます。
この大まかな流れを頭に入れておくと、
このあと出てくる
「さそりの火」
「ほんとうのさいわい」
「カムパネルラとの別れ」
「母へ届ける牛乳」が、
感想文の材料として見つけやすくなります。
コラム|そもそも読書感想文って、何を書くもの?
「感想文を書いてください。」
そう言われると、
「作品のすごいところを書かなきゃ。」
「作者が伝えたかったことを当てなきゃ。」
「立派な感想を書かなきゃ。」
と思ってしまう人もいるかもしれません。
でも、読書感想文は、
作品の正解を当てるテストではありません。
あらすじをきれいに説明するだけの文章でもありません。
もっと簡単に考えてみましょう。
本を読んだ自分の中で、
何が引っかかり、
何を考え、
考えがどう動いたのかを書く。
それが、感想文の大切な部分です。
たとえば、
「カムパネルラがかわいそうだった。」
と思ったとします。
それだけでも、感想の芽はもうあります。
そこから、
「なぜ、かわいそうだと思ったんだろう?」
と、もう一歩だけ考えてみます。
ジョバンニが一人残されたから?
カムパネルラの父のことを考えたから?
人を助けたのに、こんな結末になることが悲しいから?
そうやって考えていくと、
「かわいそうだった。」
という一言が、
少しずつ自分だけの感想になっていきます。
だから、最初から立派なことを書こうとしなくても大丈夫です。
「ここ、好きだな。」
「なんだか変だな。」
「私はちょっと納得できない。」
「この言葉、なんだか気になる。」
そんな小さな反応を見つけてください。
そこに、
感想文の入口があります。
もこコトネ:
「じゃあ、“分からない”って思ったところでもいいんですか?」
もこあい先生:
「もちろん。むしろ、“どうして分からないんだろう?”と考え始めたら、もう感想文は始まっているよ。」
このあと記事を読むときは、
答えを覚えようとするのではなく、
自分の心が動いたところや、気になった言葉を探してみてください。
一つ見つかれば十分です。
知っておきたい|『銀河鉄道の夜』には「完成稿」が残されていない
ここで、この作品について一つ知っておきたいことがあります。
『銀河鉄道の夜』は、
宮沢賢治が生前に完成させて出版した作品ではありません。
未定稿のまま死後に発見され、
宮沢賢治が何度も書き直していたことが知られています。
そのため、現在ではいくつかの段階の原稿が知られています。
その中でも興味深いのが、
ブルカニロ博士
という人物です。
初期形の第三次稿にはブルカニロ博士が登場しますが、
現在一般によく読まれている第四次稿には登場しません。
ただし、
「説明する人物を消したのだから、
宮沢賢治は読者に自由に考えさせようとしたのだ」
とまで断定することはできません。
作者の意図を、原稿の変化だけから決めつけないほうがよいでしょう。
ここでは、
私たちが読んでいる『銀河鉄道の夜』は、
何度もの書き直しを経て残された作品である
という背景を知っておけば十分です。
もこコトネ:
「じゃあ、『ここが正解です』って全部説明してくれる作品ではないんですね。」
悪もこあい先生:
「だったら、本文を見ながら自分で考えるしかないわね。」
そして実は、
それこそが読書感想文では面白いところなのです。
この話は、記事の後半でもう一度戻ってきます。
旅に出る前のジョバンニを見てみよう
銀河鉄道の幻想的な場面に目を向ける前に、
旅に出る前のジョバンニを見てみましょう。
ジョバンニは、かなり孤独です。
- 学校では疲れている
- 仕事もしなければならない
- 病気の母のことを気にしている
- 父親が家にいないことをからかわれる
- 仲のよかったカムパネルラとも少し距離がある
つまりジョバンニは、
「誰かと一緒にいたいのに、一人になっている少年」
とも読めます。
ここを少し覚えておいてください。
銀河鉄道に乗ったジョバンニは、
そのあと何度も
「誰かと一緒にいること」
について考えることになるからです。
銀河鉄道で起きたことを全部理解しなくてもいい
『銀河鉄道の夜』には、
不思議な場面が次々と出てきます。
- プリオシン海岸
- 鳥捕り
- サウザンクロス
- さそりの火
- たくさんの星や十字架
「この場面にはどんな意味があるの?」
と全部調べ始めると、
読書感想文を書く前に疲れてしまうかもしれません。
もちろん、詳しく調べることも面白い読み方です。
でも感想文を書くためなら、
すべての象徴を説明できる必要はありません。
まずは、
自分の心が止まった場面や、気になった言葉を一つ選ぶ。
それだけでも十分です。
さそりは、なぜ自分の命の使い方を後悔したのか
銀河鉄道の旅の途中で、
さそりについての話が出てきます。
さそりは、それまで他の生き物を食べて生きていました。
ところが、自分が食べられそうになったときには必死に逃げます。
そして最後には井戸へ落ちてしまいます。
そこでさそりは、
自分の命が何のために使われるのかを考えます。
そして次には、自分の体を
「みんなの幸」
のために使ってほしいと願います。
ここは、
命をどのように使うのか
について考えたくなる場面です。
ただし、
「誰かのためなら、自分を犠牲にすることが正しい」
とすぐに結論を出す必要はありません。
悪もこあい先生:
「誰かのためなら、自分なんてどうなってもいい。それが正しいってこと?」
もこコトネ:
「うーん……人を助けるのは大切だと思うけど、自分までいなくなったら悲しい人もいますよね。」
この、
「うーん……」
が大切です。
読書感想文は、
作品の考え方に賛成する文章でなくても構いません。
「私はここに少し引っかかった。」
「本当にそこまでしなければならないのだろうか。」
そんな疑問からでも、感想文は始められます。
もこコトネのメモ|気になった言葉を残してみよう
気になった言葉:
「みんなの幸」
もこコトネ:
「“自分の幸せ”じゃなくて、“みんなの幸”なんですね。」
こういうことかも:
自分だけが幸せならそれでいいのか、
それとも周りの人の幸せまで考えるのか。
この言葉から、そんな問いが生まれそうです。
感想文につなげるなら:
「自分にとって幸せとは、自分だけのものなのか?」
と考えてみてもよさそうです。
「ほんとうのさいわい」の答えを、登場人物も知らない
さそりの話を聞いたあと、
ジョバンニは「みんなの幸せ」を考えるようになります。
そしてカムパネルラに、
「ほんとうのさいわい」とは何なのだろうと尋ねます。
ところが、カムパネルラは、
「僕わからない。」
と答えます。
ここは、感想文を書くうえでとても重要な場面です。
なぜなら、
登場人物自身も、簡単な答えを持っていない
からです。
でも、ここで終わりではありません。
ジョバンニはそのあとも、
カムパネルラと一緒に、
みんなの幸せを探そうとします。
つまり、
分からない。
だから考えるのをやめる。
ではありません。
分からない。
それでも考えてみる。
なのです。
この違いは、読書感想文にもそのまま使えます。
もこコトネのメモ|「僕わからない。」が気になった
気になった言葉:
「僕わからない。」
もこコトネ:
「こんなに大事そうな問いなのに、“分からない”って答えるんですね。」
こういうことかも:
分からないことと、
考えるのをやめることは別なのかもしれません。
感想文につなげるなら:
「答えが分からなくても考え続けること」について書けそうです。
言葉を一つじっくり考えてみると、
そこから感想文のテーマが見つかることもあります。
もこコトネは、ほかの記事でも
「この言葉、どういう意味なんだろう?」
という日本語の小さな不思議を考えています。
言葉そのものを考えるのが好きな人は、
「私はうなぎです」ってどういう意味?|もこコトネと考える日本語の不思議
も読んでみてください。
ここで考えてみよう|あなたなら「ほんとうのさいわい」を何だと思う?
難しく考えなくても大丈夫です。
- 好きな人と一緒にいられること
- 自分だけでなく、周りの人も幸せであること
- 困っている人を助けること
- 自分を大切にしながら、他人も大切にできること
どれでも構いません。
もちろん、この中に自分の答えがなくても大丈夫です。
途中で考えが変わっても構いません。
むしろ、
考えが変わったところ
には、感想文になりやすい材料があります。
カムパネルラの行動を「自己犠牲」の一言だけで終わらせない
銀河鉄道の終盤。
ジョバンニは、
カムパネルラとこれからも一緒に進みたいと願います。
ところがカムパネルラは、
突然ジョバンニの前から姿を消します。
現実へ戻ったジョバンニが知ったのは、
カムパネルラが川へ入り、
ザネリを助けたあと戻ってこなかったということでした。
ここで「さそりの火」を思い出した人もいるでしょう。
ただし、
「カムパネルラは、自分が死ぬことを選んだ」
とまで決めつけないほうがよいでしょう。
ここから考えられるのは、
人を助けた行動の尊さと、
その結果として残された人の悲しさを、
どう受け止めればよいのか
ということです。
ザネリにとってはどうだったのでしょう。
ジョバンニにとっては?
カムパネルラの父にとっては?
立つ場所が変わると、
同じ出来事でも「幸せ」の見え方が変わる
のかもしれません。
「戻らない友達」と「戻ってくるかもしれない父」
現実へ戻ったジョバンニは、
カムパネルラが戻らないことを知ります。
ところが、その同じ夜。
ジョバンニは、
自分の父親がもうすぐ帰ってくるかもしれないという知らせも聞きます。
ここには、不思議な対比があります。
戻ってこないカムパネルラ。
そして、
戻ってくるかもしれない父。
大切な友達を失った悲しみのすぐそばに、
父が帰ってくるかもしれないという希望があります。
人は、
悲しみと希望を、同時に抱えることがある。
そんなふうに結末を読むこともできます。
銀河の果てまで旅をして、最後に持って帰るのは「牛乳」だった
ここで、もう一つ注目したいものがあります。
それが、
牛乳
です。
ジョバンニは銀河鉄道へ乗る前から、
母のために牛乳を取りに行こうとしていました。
そして銀河の旅から現実へ戻ると、
牛乳を受け取ります。
そのあとカムパネルラのことを知り、
父が帰ってくるかもしれないという知らせを聞き、
その知らせと牛乳を母へ届けようとします。
並べてみると、とても面白く見えてきます。
母のために牛乳を取りに行く
↓
銀河を旅し、「みんなの幸せ」を考える
↓
簡単な答えは見つからない
↓
現実へ戻り、牛乳を母へ届けようとする
銀河では、
「みんなのほんとうのさいわい」という、
とても大きなことを考えました。
でも現実へ戻ったジョバンニがすることは、
病気の母へ牛乳を届ける
という、とても身近な行動です。
ここから、
誰かを幸せにするために必要なのは、
大きな犠牲だけなのだろうか。
という問いも生まれます。
家族を気づかうこと。
友達に声をかけること。
困っている人を少し手伝うこと。
そんな身近な行動も、
誰かの幸せにつながっているのかもしれません。
ただし、
ジョバンニは銀河へ旅する前から、
母のことを気づかっていました。
ですから、
「銀河鉄道に乗ったから、初めて優しい人になった」
と考える必要はありません。
むしろ、
もともとジョバンニの中にあった身近な思いやりと、
銀河で考えた大きな「さいわい」が、
最後に重なって見えてくる
と考えることもできます。
もこコトネのメモ|牛乳が気になった
気になった場面:
銀河の旅から戻ったあと、母へ牛乳を届けようとするところ。
もこコトネ:
「銀河で“みんなの幸せ”を考えたあとに、
やることはお母さんへ牛乳を届けることなんですね。」
こういうことかも:
大きな幸せを考えることと、
目の前の人を大切にすることは、
離れていないのかもしれません。
感想文につなげるなら:
「身近な思いやりも、誰かの幸せにつながるのか」
について書けそうです。
もしかすると大切なのは「銀河鉄道に乗ったこと」より「戻ってきたこと」かもしれない
ジョバンニは銀河鉄道の旅をしたあと、
そのまま美しい銀河の世界に残るのではなく、
現実の町へ戻ります。
そこには病気の母がいます。
牛乳を届けなければなりません。
父親が帰ってくるかもしれません。
そして何より、
カムパネルラがいない世界で、
これから生きていかなければなりません。
ここから、
「大切な人を失ったあと、残された人はどう生きるのか」
という問いを考えることもできます。
似た経験が自分になくても大丈夫です。
「もし自分がジョバンニだったら?」
「自分ならカムパネルラのことをどう考える?」
と想像することでも、感想文は書けます。
最初のジョバンニと、戻ってきたジョバンニを比べてみる
ここまで読むと、
銀河鉄道の旅をジョバンニの変化として見ることもできます。
旅の前のジョバンニは、
「自分は一人だ」
という苦しさを強く抱えていました。
銀河鉄道では、
- さまざまな人と出会う
- 別れを経験する
- 誰かの幸せについて考える
- それでも簡単な答えは見つからない
そして現実へ戻ります。
つまりジョバンニは、
「答えを手に入れて帰ってきた」
のではなく、
「問いを持って帰ってきた」
とも考えられます。
ところで――「完成していない作品」の話を覚えていますか?
記事の前半で、
『銀河鉄道の夜』には、
宮沢賢治自身が「これで完成」として出版した完成稿が残されていない、
という話をしました。
ただし、
「未定稿だから、この作品には正解がない」
と考えるのは少し違います。
作品が未定稿であることと、
「ほんとうのさいわい」の答えが簡単に決められないことは、
分けて考えたほうが正確です。
感想文を書くときに直接の根拠になるのは、
登場人物の言葉や行動、そして本文です。
ですから、
「宮沢賢治は絶対にこう言いたかった。」
と作者の答えを当てにいくより、
「私は、この場面からこう考えた。」
と書いてみる。
そのほうが、自分自身の読書感想文になります。
どの場面を書けばいい?|感想文にしやすい3つの入口
迷ったら、まずは次の3つから、
一番気になったものを選んでみてください。
① さそりの火が気になった人
「誰かの役に立つためには、自分を犠牲にしなければならないのか?」
という問いから考えられます。
② カムパネルラとの別れが気になった人
「人を助けることの尊さと、残された人の悲しさをどう考えるか?」
という問いから考えられます。
③ 牛乳の場面が気になった人
「ほんとうのさいわいは、大きな行動だけにあるのだろうか?」
という問いから考えられます。
同じ作品を読んでも、感想は一つではない
| 注目するところ | 考えられるテーマ | 感想の方向 |
|---|---|---|
| 「ほんとうのさいわい」 | 幸せ | 自分にとって幸せとは何か |
| さそりの火 | 命・他者 | 誰かのために生きることをどう考えるか |
| カムパネルラとの別れ | 別れ | 残された人はどう生きるか |
| 父の知らせ | 悲しみと希望 | 反対の気持ちは同時に存在するのか |
| 牛乳 | 日常の思いやり | 小さな行動も幸せにつながるのか |
「感想が浅いかも」と思ったら、もう一つだけ問いを足す
たとえば、
「カムパネルラがかわいそうだった。」
だけで止まると、
そこから文章を広げるのが難しくなります。
そこで、
「なぜ?」
を一つだけ足してみます。
「なぜ、かわいそうだと思った?」
「誰の立場からそう感じた?」
「すばらしい行動だと思うのに、なぜ悲しい?」
こうして問いを一つ足すだけで、
感想 → 理由 → 自分の考え
へ進みやすくなります。
あなたも「気になった言葉」を一つメモしてみよう
ここまで、もこコトネは、
- 「みんなの幸」
- 「僕わからない。」
- 母へ届ける牛乳
に立ち止まって考えてきました。
今度は、あなたの番です。
| メモすること | 書いてみる内容 |
|---|---|
| 気になった言葉・場面 | なぜか目に止まったもの |
| なぜ気になった? | 好き・疑問・悲しい・変だと思ったなど |
| 自分はどう思う? | 賛成・反対・まだ分からないでもOK |
| 何を書けそう? | 感想文のテーマ候補を一つ |
ここが一つ埋まれば、
もう感想文の材料があります。
感想文は「考えが動いた順番」で書いてみよう
書く順番は、難しくありません。
最初に思ったこと
↓
気になった言葉・場面
↓
そこで考えが動いたこと
↓
今の自分の考え
という流れです。
たとえば、
私は最初、『銀河鉄道の夜』はジョバンニとカムパネルラの友情を描いた物語だと思っていました。
しかし、さそりの話やカムパネルラの行動を読むうちに、
誰かのために自分を犠牲にすることが、本当に幸せなのか疑問に思いました。さらに、「ほんとうのさいわい」が何なのかを登場人物自身も簡単には答えられないところが印象に残りました。
私は、幸せには一つの答えがあるのではなく、
分からなくても考え続けることに意味があるのではないかと思いました。
これは完成した模範解答ではありません。
考えがどう動いていくかを示す一例
です。
「私は分からなかった」から書き始めてもいい
こんな書き出しでも構いません。
私は『銀河鉄道の夜』を読み終わっても、
「ほんとうのさいわい」が何なのか分かりませんでした。
その次に、
- なぜ分からなかったのか
- どの言葉や場面で迷ったのか
- 最初はどう考えたのか
- 今はどう考えているのか
と続ければ、
自分らしい文章になります。
分からない → 考える → 少し考えが動く。
そこに、読書感想文があります。
タイトルに迷ったら|こんな方向もあります
感想文を書いたあとにタイトルが決まらない場合は、
自分が一番気になった問いから考える方法があります。
- 「ほんとうのさいわい」とは何だろう
- カムパネルラとの別れから考えたこと
- 問いを持って帰ってきたジョバンニ
- 銀河の旅と一本の牛乳
- 分からないまま考えるということ
そのまま使う必要はありません。
自分の文章を読み返して、
「自分は結局、何について一番考えたのだろう?」
と考えてから、自分の言葉に変えてみてください。
最初の3つの問いに戻ってみよう
銀河鉄道の旅は何だったのか?
夢だった。
死の世界への旅だった。
ジョバンニの心の中の旅だった。
いろいろな読み方ができます。
感想文では、
「その旅によってジョバンニは何を考えるようになったのか」
に注目してみると書きやすくなります。
「ほんとうのさいわい」とは何か?
作品の中に、簡単な模範解答はありません。
だから、
自分なら何を幸せだと思うか。
そして、
なぜそう思うのか。
を考えてみる。
それが、そのまま感想になります。
現実に戻ったジョバンニは何をするのか?
カムパネルラは戻りません。
それでも、ジョバンニは現実へ戻ります。
父が帰ってくるかもしれないという知らせを聞き、
牛乳を持って母のもとへ向かいます。
だから私は、
『銀河鉄道の夜』は、
「どこへ旅したのか」だけではなく、
「問いを持って現実へ戻ったあと、どう生きるのか」を考える物語としても読める
と思います。
もちろん、これは一つの読み方です。
まとめ|答えではなく「問い」を持って帰ってもいい
『銀河鉄道の夜』は、不思議な作品です。
読み終わっても、
銀河鉄道とは何だったのか。
カムパネルラは何を考えていたのか。
「ほんとうのさいわい」とは何なのか。
すべてがすっきりするわけではありません。
でもジョバンニ自身も、
簡単な答えを手に入れて銀河から戻ってきたわけではありません。
それでも、
考える。
現実へ戻る。
母へ牛乳を届けようとする。
だから読書感想文でも、
「正しい答えを見つけなければならない」
と力を入れすぎなくてもいいのではないでしょうか。
「この言葉が気になった。」
「この場面で少し引っかかった。」
「私は最初、こう思った。」
「でも、考えているうちに少し変わった。」
それだけでも、
自分だけの感想文の始まりです。
この記事を閉じる前に、
一つだけ選んでみてください。
- 気になった言葉はあった?
- 心が止まった場面はあった?
- 「どうして?」と思ったことはあった?
一つ見つかったなら、
もう感想文の材料があります。
そして、もしかすると――
答えを見つけたときではなく、
「この言葉、なんだか気になる」
「どうしてだろう?」
と考え始めたときに、
あなたの銀河鉄道の旅は始まっているのかもしれません。
次に読むなら|考えることを楽しむ関連記事
『銀河鉄道の夜』では、
「ほんとうのさいわい」や「僕わからない。」といった言葉から、
自分なりの問いを見つけてきました。
ほかの作品でも、
「分からない」「気になる」「どうしてだろう?」
と思ったところから、読書感想文を始めることができます。
『藪の中』|証言が食い違うとき、何を信じる?
同じ出来事について語っているはずなのに、
登場人物たちの証言が食い違う『藪の中』。
「結局、何が本当なの?」という疑問から、
自分は何を信じるのかを考えていく記事です。
『藪の中』の読書感想文が書けない人へ|食い違う証言から「自分は何を信じるか」を考える
『羅生門』|下人の決断を、自分ならどう考える?
『羅生門』では、
下人が最後に選んだ行動について、
「なぜそうしたのだろう?」と考えることができます。
登場人物の行動に納得できなかったところも、
自分の感想を作る大切な入口になります。
『山月記』|李徴は、なぜ虎になったのか?
李徴のプライドや後悔、人との距離に注目すると、
『山月記』も「難しい作品」から
自分自身について考えられる作品へ変わってきます。
もこコトネと、もう少し「言葉」を考えてみる
今回の記事では、
もこコトネが「気になった言葉」をメモしながら、
そこから感想文の材料を探しました。
言葉は、
その言葉だけではなく、前後の場面や状況によって意味が広がる
ことがあります。
「言葉って、おもしろいかも」と思った人は、
こちらの記事もどうぞ。
「私はうなぎです」ってどういう意味?|もこコトネと考える日本語の不思議
「この言葉、気になる。」
「どうして、こんな行動をしたんだろう?」
「私は、ここに少し引っかかった。」
その小さな反応を、大切にしてみてください。
参考にした主な資料
- 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』青空文庫
- 青空文庫「銀河鉄道の夜」図書カード
- 国立国会図書館 レファレンス協同データベースに収録された『銀河鉄道の夜』の異稿に関する調査資料
本文中の場面や登場人物の言葉を確認するときは、
青空文庫に収録された本文を参照しました。
また、作品の成立については、
本作が未定稿のまま死後に発見されたことや、
複数の稿が存在することを確認できる資料を参考にしています。















